幻となったサンタ・モニカ討論会
ラ・ビクトリア区で選挙キャンペーンを行うカスティーヨ氏と、 行かないと言っていたカスティーヨ氏を一応待つケイコ氏 |
15日土曜日に予定されていたサンタ・モニカ刑務所前での討論会は、参加を否定していたカスティーヨ氏が宣言通り会場に現れなかったため中止となり、案の定「カスティーヨ氏が逃げた討論会」という名のケイコ氏の政治集会となりました。笑
カスティーヨ氏が言い出しっぺの討論会ではありましたけど、本人は参加を明確に否定していたため、ケイコ氏もカスティーヨ氏が来ないことは百も承知と言う感じでした。そのため討論会の中止が発表された後はスムーズにケイコ氏の政治集会が開かれていました。笑
この政治集会では、かつて人民勢力党の議員でありながら、仲違いして離党したケイコ氏の弟であるケンジ氏が登場し2人の和解が演出されました。このケンジ氏の離反は「フジモリ派」の求心力を低下させた事件の一つでした。
壇上に上がり話すケンジ氏。左側はカスティーヨ陣営の様子。 テレビ局は両陣営の様子を画面分割して生中継してました。 |
ちなみにケンジ氏は5月3日に新型コロナに感染し入院していたことを公表していましたが、なんともタイミング良く、この日の朝退院したそうです。笑
コロナに感染した時のことを語りだしたら急に泣き出すケンジ氏。笑 |
では一方のカスティーヨ氏はというと、同じリマ市内のラ・ビクトリア区で選挙キャンペーンを行っていました。
彼は以前からこの日は討論会に行かずに、自身が当選した場合に就任後100日間で取り組む政権計画を発表すると発表していました。
しかし、ラ・ビクトリア区の公園で話し始めたカスティーヨ氏の手には政権計画らしき紙が握られていましたが、彼の政策技術チームのメンバーを数人紹介しただけで、彼の言う政権計画なるものは発表されませんでした。
正直、両陣営とも面白くない選挙集会がずっと生中継されてて、正直うんざりでした。笑
討論会見たかったなー…笑
あ、ちなみに前回の記事でご紹介したJNE(全国選挙審議会)が主催する討論会ですが、30日の大統領候補者の討論会はペルー南部のアレキパ州で開催されることが決定しました。
カスティーヨ氏陣営の準備不足
実はカスティーヨ氏、これまで政策技術チームのメンバーを公表していませんでした。
ラ・レプブリカ紙の報道では、カスティーヨ氏が所属しているペルー・リブレ党内がまとまっておらず、政策技術メンバーの編成や政権計画の策定が遅れていたようです。
もともとペルー・リブレ党というのは、元フニン州知事でマルクス・レーニン主義者のウラジミール・セロン氏が創設した党で、かなり急進的なイデオロギーを持っています。
※ちなみにセロン氏は知事時代での汚職で有罪判決を受けています。
そんなペルー・リブレ党の急進的なイデオロギーへの危機感が広がっていることから、もう少し穏健で現実的な政策へと方針転換し、支持を広げたいという思惑があるカスティーヨ氏と、急進的な政策を実現したいセロン氏や、党との足並みが乱れていました。
というのも、元経済大臣のカート・ブルネオ氏が「カスティーヨ氏から協力を依頼され、協力の条件としてセロン氏と距離を置き、経済面での提案を修正することの2点を要求した」と自身のツイッターで報告したところ、セロン氏がそのツイートを引用して「あなたは必要ない」と投稿するなど、両者の足並みの乱れは明らかでした。カスティーヨ氏は「任命するのは自分だ」と釈明していましたが、結局ブルネオ氏はメンバーを辞退しました。
カスティーヨ氏は、JNEによる公式の討論会開催が決まった後、予定していたペルー南部での選挙キャンペーンを急遽中止し、リマの陣営本部に籠っていることからも政策技術メンバーの編成や政権計画の策定に難航している様子が伺えます。
その甲斐もあり、ここ数日で政策技術メンバーがなんとか決まりつつあるようで、先述した技術メンバー数名の紹介という事になりました。また翌日の日曜日には、政府計画も公式に発表しました。またその後の火曜には、リマのプエンテ・ピエドラ区での政治集会にて、他の政策技術メンバーも発表しています。今週には残りのメンバーも発表するとのこと。
こうして準備不足が指摘されていたカスティーヨ氏ですが、なんとかJNEによる公式の討論会前に政策技術メンバーと政権計画がまとまったようです。
しかし、ペルー・リブレ党内では、カスティーヨ氏が当選したら党から距離を置くのではないかという懸念が広がっているそう…。今週日曜日にはリマで政策技術チームによる討論会が開催されますが、どのような政策案が提示されるのか。準備不足という懸念を払しょくできるのか注目です。
ケイコ氏、エクアドル行きを拒否される
ケイコ氏は、ノーベル文学賞受賞者のマリオ・バルガス・リョサ氏から、5月23日(日)にエクアドルの首都キトで、同氏が主宰する自由のための国際財団が主催する「イベロアメリカ・フォーラム:自由への挑戦」に招待されていました。
マリオ・バルガス・リョサ氏は、反フジモリ派の代表的な人物で、かつて大統領選にも出馬しケイコ氏の父アルベルト・フジモリ氏に敗れたという過去があります。しかし今回の大統領選では「より少ない悪を選ぶべきだ」としてケイコ氏の支持を表明しています。
ただケイコ氏は現在、資金洗浄の容疑で起訴されていることから、国内の移動でさえ裁判所から許可を得ないといけないという状態。しかし、ケイコ氏は「逃亡の恐れはない」としてエクアドルへの出国許可を裁判所に申請していました。
ただ、検察側が「他国領内ではケイコ氏に課した措置の管理が不可能」という理由で、裁判所に対してケイコ氏の出国を認めないよう要請をしました。
そして裁判所は、検察側の主張を認め、特に捜査妨害の危険性からケイコ氏に課した制限付きの出頭という措置を、他国領内では当局が管理する方法が無いことから、出国の拒否は合理的であると判断したようです。
また、国内での移動は認められていることから、ケイコ氏の被選挙権への制限は最小限に抑えられているとのこと。
ケイコ氏はこの司法判断を受けて自身のツイッターに「キトへの渡航を拒否されたことは非常に残念ですが、いつものように、私は司法の判断を非常に尊重しています。」と投稿し、フォーラムにはオンラインで参加する意向を示しました。
最新の世論調査
前回の記事でも追記しましたが、DATUM社が12~13日にかけて実際のものと同様の投票用紙を使った模擬投票形式の世論調査を行い、カスティーヨ氏44%、ケイコ氏41%とその差は3%となっています。また、電話での投票意向調査ではカスティーヨ氏42%、ケイコ氏40%とその差は2%となっており、両者の差がさらに縮まっているようです。
ただ、同時期に行ったIEP社による世論調査ではカスティーヨ氏36.5%(0.3%増加)、ケイコ氏29.6%(0.4%減少)とわずかな変化ではありますがカスティーヨ氏がリードを伸ばしています。ただ、誤差を考慮すると前回調査と同じ結果と見るべきかもしれません。
現状、両候補者の差が縮まっているのは間違いないでしょう。しかし、依然としてカスティーヨ氏の優勢は変わらず、ケイコ氏は追いかけているという状況です。
いやー接戦で目が離せませんね!
返信削除自作のイラストが含まれていて、面白い記事です!
今後も楽しみにしています!
そう言っていただけると励みになります!
削除ありがとうございます!!
カスティーヨ氏は選挙に勝つために企業国有化などの過激な社会主義的な公約はしないでしょうね。実際、仮に彼が大統領になっても財界の力が強くて難しいのでは。確か同じく急進左派だったウマラ氏もケイコさんに勝って大統領になった後、穏健な路線に変更しましたよね。何となくこのままカスティーヨ氏が僅差のリードを守ってずるずる行きそうな気がします。ケイコ氏はイラストにも描かれている3つの足かせが厳しいですね。
返信削除コメントありがとうございます!
削除そうですね。カスティーヨ氏も、ケイコ氏との差が縮まっている以上、自身はそういう戦略で当選を目指したいと思っているでしょう。ただ一回目の投票後「プランを変えるつもりが無い」と強気だったのと、ペルー・リブレ党やセロン氏の目もあり、どこまで調整できるかは不透明ですね…。
彼が最近公表した政権計画でも「過剰な利益のある企業からの公正な貢献」や「第2次農業改革プロセスの開始」という項目があるので…。
ただ、仰る通り財界の反発は間違いないでしょうし、しかも次の議会では自由市場経済推進派が多数なので過激な政策の実現はかなり難しいはずです。
私も、このままだったらカスティーヨ氏が当選する可能性が高いと思います。ケイコ氏はアンチの多さから、かなり厳しい戦いになっていますね。
どちらにせよ、誰が勝っても政治的な安定は期待できないですね。笑
rokkoimport様 いつも読んでいただき、コメントもありがとうございます!
返信削除カスティーヨ氏が当選しても、あまりにも急進的な政策は議会がブレーキをかけるでしょう。ただ、公約である憲法改正のプロセスでセロン氏が「議会の解散」に言及している点が心配です。これも難しいとは思いますが…。
討論会に関しては、どちらの陣営もまずは各地の選挙キャンペーンを優先したいという思いがあったと思います。あとは、カスティーヨ氏陣営が渋っていたので、開催が遅れたんですよね。あと、リマ以外での開催というのもカスティーヨ氏陣営がこだわったそうです。笑
カスティーヨ氏はリマ対地方という構図を積極的に演出していますね。
反フジモリ派の集会またやるみたいですね。笑
前回の大統領選では、ケイコ氏敗北の「決定打」になったという分析もあるそうなので、ケイコ氏にとっては宿敵ですね。笑
今回も選挙戦にどれほどの影響を与えるのか注目ですね!
フジモリ大統領の評価って本当に難しいですね。功罪どちらもあったのは間違いないですが、ここまで嫌われているというのは興味深いですね。日系人という事で「異質」ではあったのですが、大統領としては「ペルー的」というか「ラテンアメリカ」的な権威主義的大統領だったと思うんですけどねー…。
「フジモリ」というのは、この20年余りのペルー政治史で最も重要なテーマでしょうね。
ケイコ氏に関する論評読ませていただきました、とても興味深かったです!
教えていただき、ありがとうございました!