そして5月1日に、初めての「討論会」がカスティーヨ氏の地元、カハマルカ州のチョタ市で行われました。でもそこに至るまでには色々とあり…。
さて、ペルー大統領選挙の決選投票まで残り1か月となりました。
これまでカスティーヨ氏は、ケイコ氏支持者が比較的多い北部の街を北上しながら選挙キャンペーンを展開していきました。途中、私たちがいるトルヒーヨ市にも来てました。
家の近くで見かけたカスティーヨ氏陣営のキャンペーンカー |
一方のケイコ氏は、自身の支持者が比較的多い東部アマゾン地帯を回っていました。
このように各々が各地で政治集会を開いているのですが、全国選挙審議会(JNE)は決選投票までに大統領候補2回、副大統領候補1回、政策専門家チーム1回、の計4回の討論会を行うよう両陣営に対し求めています。(あくまで要請で、義務ではないとのこと)
しかし、なかなか討論会の日程が決まらず、JNEが求める4回の討論会の開催が可能かどうかも不透明という状況でした。しかし色々あって急遽、5月1日にカスティーヨ氏の地元カハマルカ州のチョタ市で初めての候補者討論会が開催されました。
実は、カスティーヨ氏陣営がJNEの求める討論会に難色を示していたことが原因で討論会の日程がなかなか決まらなかったのです。
こうした状況を受けてケイコ氏はメディアのインタビューで、「No te corras Pedro, no te corras(逃げるなペドロ、逃げるな)」というキャッチフレーズで討論会を渋るカスティーヨ氏陣営に対し、討論会を受け入れるよう呼びかけていました。
その呼びかけにカスティーヨ氏は、自身の地元である「カハマルカ州のチョタ市でなら討論会を行おう」と答えました。
首都のリマからは900 km以上離れていて、ケイコ氏にとっては完全にアウェーな場所での討論会という条件は、カスティーヨ氏にとっての作戦だったのか、あるいは新たな逃げの方便だったのか…。
しかしケイコ氏はこの条件を受け入れました。そのうえ、「そちらが場所を指定するなら日時はこちらで決める。今週日曜日の午後8時に行いましょう。逃げないでね。」と、プロレスさながらのやり取りで討論会の開催が急遽決まりました。笑(※ちなみにケイコ氏がこれを言ったのは水曜日の夜でした。)
その翌日、ペルー北部トゥンベス州から空路で首都リマに向かったカスティーヨ氏は、トゥンベスの空港で撮影された動画のメッセージを自身のツイッターに投稿しました。
その動画で彼は討論会の日時をケイコ氏が指定した日曜ではなく、その前日の土曜日の午後1時にすることと、チョタ市の中央広場で行うという新たな条件を出しました。
さらに動画では「私は逃げていない。私の国を略奪した後に逃げたのはあなたの父親(※)だ。」と言い返しています。笑
※ケイコ氏の父アルベルト・フジモリ元大統領(現受刑者)は大統領在任中の2000年に、ペルー国内で自身への批判が高まったことを受け、日本に逃げたという過去があります。笑
カスティーヨ氏が動画を投稿してから1時間後には、ケイコ氏も自身のツイッターで、
「ペドロ・カスティーヨ氏は、新たな言い訳や条件をつけて議論を避けて逃げ続けています。そして今度は、全国民が私たちの生中継を見ることができる日曜の夜にはできないと言っています。でも、彼と違って私は逃げません。土曜日にチョタ市で、という彼の新しい条件を受け入れます。」と返答しました。
しかしその後、予想外の展開がありました。
ケイコ氏の返答から約2時間後、カスティーヨ氏の所属政党であるペルー・リブレ党の公式ツイッターアカウントが、カスティーヨ氏が呼吸困難に陥ったためクリニックに移送された、と発表しました。
ややこしいので流れを簡単にまとめると
カスティーヨ氏陣営、討論会渋る
↓
ケイコ氏が「逃げるなペドロ」と挑発呼びかけ
↓
カスティーヨ氏、自分の地元ならと提案
↓
ケイコ氏受け入れ、その代わり日時指定(日曜の夜)
↓
カスティーヨ氏、日時変更(土曜の昼)
&場所指定(チョタ市広場)
↓
ケイコ氏新たな条件受け入れ
↓
NEW→ カスティーヨ氏呼吸困難で病院へ
このような流れなので、SNSなどでは「カスティーヨ氏が逃げた」というコメントがどうしても多くなってしまっていました。笑
※カスティーヨ氏は、自身がリーダーとして率いていた2017年の教員によるストライキ中に、演技で倒れたふりをしたことがあるという「前科」があります。笑
ただ、コロナが蔓延しているという状況から、念のため大事をとるのは理解できますけどね。ただ、タイミングがね…。笑
そして、その日リマで予定されていたカスティーヨ氏の選挙キャンペーンも全てキャンセルとなり、2日に控えた土曜日の討論会開催も雲行きが怪しくなってしまいました。
しかも、JNE側が「1日半で討論会の準備なんて無理ですっ!」と発表したため、ペルー・リブレ党側も土曜日の開催は困難という見方をしていました。
しかし、その夜、カスティーヨ氏はツイッターで検査の結果がただの喉の炎症だったことと、「翌日カハマルカ州に向かい、討論会を必ず行う」と投稿し、実際に翌日カハマルカ州に向かいました。
ケイコ氏も同日カハマルカ州に向かい、カスティーヨ氏が指定した場所であるチョタ市の市長も討論会を開催すると断言したことから、怪しかった討論会開催がなんとか現実のものとなりました。
討論会の様子。テレビ各局が生中継してました。 |
という訳で、チョタ市という小さな自治体が主催する、異例の大統領候補者討論会が開催されました。
ただこの討論会、候補者がお互いに質問したり、指摘&追求したりする時間がほとんどなくて、討論会というよりは各自喋りたいこと喋るだけのただの演説会になってしまっていました…。笑 (ケイコ氏は討論会のルールがペルー・リブレ党とチョタ市側で勝手に決められたとクレーム付けてました。)
しかも、カスティーヨ氏の地元ということで、ケイコ氏が喋ると一斉に怒声やブーイングが響き渡っていました。笑
この討論会の個人的な印象としては、カスティーヨ氏は相変わらず急進的な傾向が強く、実現可能性が低い主張や、実現したら経済的にえらいことになっちゃう主張をしていて、かなり不安になりました。笑
ただ、討論会が「言いたいこと言う会inチョタ市」と化していたためか、両候補者とも「それできるの?」というようなポピュリズム的な主張が目立ち、正直あまり有意義なものではなかったように思います。
ただ比較的ケイコ氏の方が現実路線で、具体的な主張をしていたとは思います。比較的ね。笑
ただ、このチョタ市での討論会が終わってからも、再び討論会実施に向けてJNEと両陣営の代表が話し合っているのですが、現在まで同意されておらず開催の見通しは不透明です。
ケイコ氏陣営はJNEが主催する4回の討論会開催に前向きなのですが、カスティーヨ氏陣営が「4回の討論会開催は多すぎる」と難色を示しているようです。
こうした状況から最近ではケイコ氏が「討論会に履いていくズボンが無いなら(ペルー・リブレ党の代表である)ウラジミール・セロン氏を討論会に出させてよ!」って言い出すほど…。笑
※ウラジミール・セロン氏はマルクス・レーニン主義を掲げるペルー・リブレ党の創設者で、急進的なイデオロギーを持っており、ベネズエラの現政権と仲が良く、過去にフニン州知事時代の汚職で有罪判決を受けているというカスティーヨ氏にとっては「重たいお荷物」な人です。
どちらが勝つにしても、市民社会が分断されており、多くの政党が乱立し政党政治が定着しない政治的に不安定なペルーにおいて、安定した政権運営をするためには国民への説明と理解は絶対に必要だと思います。
大統領を目指すなら討論会でお互いに政策案
ぶつけ合ったらいいじゃない!!
有権者への説明は民主主義の基本よっ!
No te corras Pedro, No te corras.
個人的に2人のバチバチ討論会がめっちゃ見たいんです…。笑
選挙戦の現状
大統領候補者 |
政党 |
支持 |
3位 ロペス・アリアガ氏 |
Renovación Popular 人民刷新党 |
ケイコ氏 |
4位 エルナンド・デ・ソト氏 |
Avanza País 国家前進党 |
ケイコ氏 |
5位 ジョニー・レスカノ氏 |
Acción Popular 人民行動党 |
自由投票 |
6位 ベロニカ・メンドーサ氏 |
Juntos Por El Perú ペルーの為に共に党 |
カスティーヨ氏 |
7位 セサル・アクーニャ氏 |
Alianza Para El Progreso 進歩のための同盟党 |
ケイコ氏 |
という結果になってます。
こう見るとケイコ氏支持が多いですが、どの政党も消極的支持という感じで、その政党の支持者もそのままケイコ氏を支持するという感じではないですね。
ケイコ氏の各方面からの嫌われ具合は本当にすごい…笑
現在ペルー最大の政治勢力は「反フジモリ派」なのではないかと本気で思ってしまいます。笑
ただ、はたしてカスティーヨ氏に投票しようと思っている人で、カスティーヨ氏の「政策」を支持している人っていったいどれくらいいるんだろうか…。笑
一方のカスティーヨ氏支持を表明している6位のベロニカ・メンドーサ氏は、カスティーヨ氏陣営とパンデミックへの対応、経済の再活性化、汚職との戦い、平等な権利による民主主義という4つの目標を掲げた政治協定を締結するなど積極的な支持の姿勢を見せています。
現在も新たな討論会の開催が実施されるかはまだまだ不透明ですが、カスティーヨ氏側もJNEが求める4回という回数には難色を示しつつも、討論会の開催自体には同意しているらしいのです。次回の討論会はもっと有意義なものになることを願っています。笑
泣いても笑っても決選投票まで残り1か月。ペルー国民はこの難しい選挙にどのような審判を下すのでしょうか。
まだまだ目が離せませんね!
いつも読ませていただいております。ペルーの近況や文化を日本語で解説していただき大変感謝しております。いつかお二人にお会いしてみたいです。
返信削除https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN121SE0S1A410C2000000/
最終的にエクアドル選挙と同じ結果になると思うので自分は心配していませんが、FPが勝利した後の騒動の方が心配です。
今後もコロナに負けずがんばってください。
コメントありがとうございます。
削除こちらこそ、いつも読んでいただいて感謝です!
ありがとうございます!!
是非是非!いつかお会いしたいですね。ペルーにお住まいなんですか?
エクアドルのようになればいいんですけどねー・・・
このままの勢いだったらケイコさんの勝利が見えてくるかもですけど、いかんせんアンチが多いですからね。笑
前回の大統領選ぐらいギリギリの決着になるかもしれませんね。
まぁどちらが勝っても、落ち着かないのは間違いないでしょう。
ペルーは一体どこに向かってしまうのやら…。笑
お互い健康に気をつけて乗り越えましょう!