4月10日木曜日の夜、私たちは所属する舞踊団(マティセス)のディレクターのウゴ、ルベンと一緒にトルヒーヨのバスターミナルに集合しました。

この日から始まったのは、ペルーの首都リマへの0泊2日の弾丸旅行で幕を開けた、夢のような怒涛の1週間でした。


バスターミナルで出発を待つ私達
左からウゴ、ルベンです。


私たちの住むトルヒーヨからリマまでは、バスで9時間~10時間ほど。

日本の夜行バスと比べるとペルーの夜行バスは快適な方なのですが、熟睡できるというわけでないので、2晩夜行バスというのは正直キツイ。

私たちとウゴは30代、ルベンに至っては40歳という私たち4人が、まるで学生時代のような若い計画でリマに向かったのは、とても素敵な出来事が待っていたからです…。


翌朝、無事にリマの街に到着!

長時間のバス移動で体はバキバキでしたが、そのまま休む間もなく、私たち4人はすぐに目的地であるバランコ地区へと向かいました。それはペルーを代表するダンサーの一人であり、アフロペルー界のトップダンサーとして超有名な「エデル・カンポス(Eder Campos)」さんのレッスンを受けに行くため。

レッスンを受けるスタジオ近くのカフェで
コーヒー飲みながらレッスンまでの時間つぶし


実は、ウゴはダンス界での顔がすごく広くて、エデルさんとも知り合いなんです。実は去年も、エデルさんがペルーの超有名歌手エヴァ・アイジョン(Eva Ayllón)さんのコンサートのダンサーとしてトルヒーヨに帯同して来た時に、わざわざ私達のために時間を作って特別にレッスンをしてくれたことがありました。その時のレッスンがとっても楽しくて、今回もまたレッスンを受けられるなんて本当にラッキーでした!


昨年レッスンを受けたときに一緒に撮った写真
エデルさんがキャプテン翼のTシャツを着ていて嬉しかったです(笑)


今回は、アフロペルーダンスの代表的なダンスであるフェステホの基礎向上と、「ソン・デ・ロス・ディアブロス(Son de los diablos)」という舞踊を教えてもらいました。 


レッスン前にスタジオでパシャリ♪

ソン・デ・ロス・ディアブロスの「ディアブロス」とは「悪魔たち」という意味で、とても怖い名前がついていますが、踊りは全く怖いものではなく悪魔のお面を着けたダンサーがコミカルに踊るとっても可愛らしいダンスです。

元々は悪魔を表現しているというよりも、キリスト教のお祝い(聖体祭)で、黒人達が自分達の踊りで祝っていた姿を、白人達が蔑んで呼んだことから「悪魔」という名前がついているのだそう。

なので、この踊りでつける仮面は悪魔らしい角がついていますが、顔は悪魔というよりも唇が厚く黒人の身体的特徴が表れています。

カポラル(Caporal)というリーダーと他の悪魔たちがいて、可愛い衣装と特徴的なマスクをつけた悪魔たちは、いたずらしたり、ふざけたりしますが、カポラルは彼らをきちんと並ばせたり、怒ったり、注意したりしながら彼らを従えてコミカルに楽しく踊ります。

実際踊りを見ていると悪魔達とその親玉というよりは、いたずら大好きな近所の可愛い子供たちと、彼らを見守るおじいさんという感じです。笑

ソン・デ・ロス・ディアブロス(Son de los diablos)
左の大きなお面の人がカポラル(Caporal)

こんな感じのダンスです。


エデルさんは、ただ踊りの動きだけじゃなく、踊りの歴史や文化的な背景も熱く語ってくれました。テクニックだけでなく、ダンスの歴史と意味への深い敬意を持っているエデルさんが、踊りで人を感動させることができるトップダンサーである理由が分かる気がしました。


夜行バスでリマに着いてからすぐのレッスンでめちゃくちゃ疲れましたが、とても貴重で楽しい時間でした!


レッスン後にエデルさんとパシャリ
疲れたけど楽しい時間でした♪


エデルさんとのレッスン後、私たちはウゴの親友でもあるクラウディア・オルテガさんのお家に行きました。クラウディアさんはペルー国立民族舞踊団に所属するペルーを代表するトップダンサーで、夜に舞踊団の公演の千秋楽を控える中、私たちを温かく迎えてくれました。

お昼もご馳走していただき、いろんなお話をしながら過ごした後、クラウディアさんは公演のため一足先に劇場へ。私たちはしばらく仮眠をとってから劇場に向かいました。

実は今回のリマ訪問の目的は、この、クラウディアさんも出演するペルー国立民族舞踊団の公演「レタブロ・デ・カンデラリア」を観ること!

ペルー国立民族舞踊団はこの「レタブロ」シリーズの公演をよく行っていて、舞台上に巨大なレタブロを再現して、そのレタブロの扉を開けると、テーマとなっている様々な民族舞踊が繰り広げられるというコンセプトです。

レタブロ」とは扉つきの箱型祭壇の通称で、ペルーの伝統工芸品です。小さな箱の中に宗教的な場面や民俗的な風景をカラフルな人形や飾りで立体的に表現したとってもかわいいものです。

レタブロ

今回の公演は「レタブロ・デ・カンデラリア」

カンデラリアとはペルー南部チチカカ湖畔にあるプーノという街の守護聖人です。つまり今回の公演のテーマ、プーノ地域の様々な民族舞踊。プーノ地域の舞踊は力強くてめちゃカッコいいし、衣装も超カラフルでペルーでもとても人気があります。


レタブロ・デ・カンデラリア公演のポスター


公演の行われる「Gran Teatro Nacional / 国立大劇場」


初めての国立大劇場でテンションが上がります♪
ステージ近くの席だったのでダンサーの表情まではっきり見れました!


客席に着いたらこのように舞台上に
レタブロを模したセットが構えています。


公演が始まるとその扉が開き、様々な美しい伝統舞踊が繰り広げられます♪

エンディングの様子。最後はこのようにレタブロの扉が閉じて終わります。
ちなみに最後の踊りはディアブラーダという踊りでした。本当に最高でした!



私たちにとって、ペルー国立民族舞踊団の公演を生で観るのは初めての経験で、興奮しっぱなしでした!彼らの素晴らしい技術と表現力、舞台全体の一体感と熱気に圧倒され、鳥肌が立ちっぱなしでした。

公演が終わった時は満員の観客全員が拍手喝采!私たちも心から感動して、「いつか自分たちもこんな風に人を感動させるダンサーになりたい!」と強く思いました。


公演後に看板の前で。
舞踊団の仲間であるサミー(左から2番目)もたまたま観に来ていたので
舞踊団のメンバーで記念撮影♪


そして、今週の本番はこの後。
実はディレクターのウゴが、彼の友人である国立舞踊団のメンバー3人に「公演が終わったらトルヒーヨまで私たちの舞踊団にレッスンしに来てください!」と以前から頼んでいたんです。
そしてその3人は快く承諾してくれて、公演後にトルヒーヨまで来ることになっていました。
ということで、「どうせだったら俺たちでリマまで公演の千秋楽を観に行って、彼らと一緒にトルヒーヨまで帰らない?」とウゴが提案してくれたのがきっかけで今回の0泊2日の夜行バス旅が実現したんです。

そして、公演の感動が冷めやらない中、公演に出演していたクラウディアさんと、同じく国立舞踊団のメンバーであるクリスティアンさんという方が、そのまま私たちと一緒にバスターミナルに向かい、同じバスでトルヒーヨに向かいました。

公演後のバタバタしている中、2人とも化粧もそのままでシャワーも浴びないままバスターミナルまで向かってくれました。乗車後は彼らも私たちもぐったりだったので、バスに乗って気づいたらもうトルヒーヨに着いていました。今までで一番気持ちよく眠れた夜行バスだったかもしれません。笑

そして翌日には、もう一人の国立舞踊団のメンバーであるキケさんも、別でトルヒーヨに来てくれました。こうしてこれから5日間、ペルー国立民族舞踊団に所属する3人のマエストロたちからレッスンを受けるという、ダンサーとしては天国のような日々が始まりました!


充実したレッスンの日々

クラウディアさんキケさんは以前にも私たちの舞踊団のためにわざわざトルヒーヨまで来てくれたことがあって、今回は再会を喜び合いました。クリスティアンさんとは初対面でしたが、その技術の高さと分かりやすい教え方、そしてやさしさに感動しました。



以前キケさんとクラウディアさんが来てくれた時の写真

キケさん

クラウディアさん



さて、この5日間は怒涛のレッスン漬け。

クラウディアさんキケさんクリスティアンさんという3人の超一流のダンサーたちから、毎日舞踊団での練習や個人レッスンを受けることができました。

3人のマエストロ達は、今年予定している私たちの公演に向けて、今練習している踊りを細部までブラッシュアップしてくれたり、それぞれの踊りの基礎の動きや見せ方などといったことを丁寧に教えてくれました。

また、リマで「GOT TO DANCE」という大きなダンススクールを主宰しているクリスティアンさんは、今回そのスクールで無料で学ぶことができる奨学金を数名に与えるとアナウンスしていて、舞踊団のみんなのやる気にも火がついていました。

レッスンは夜遅くまで続くこともあって、正直ヘトヘトでした。笑

基本的な姿勢やポジションの確認から始まって、振付の細かい部分、表現力のアップ、フォーメーションのブラッシュアップなど、プロの視点からの指導はめちゃくちゃ勉強になりました!




また舞踊団の通常練習とは別に、クリスティアンさんがジャズダンスやコンテンポラリーダンスのレッスンの時間を作ってくれて、人生で初めてジャズダンスやコンテンポラリーダンスに触れました。

さすが大きなスクールを運営されているだけあって、教え方が本当に上手でした。

レッスン後にクリスティアンさんと。


ジャズダンスのレッスンというのは初めて体験しましたが、とっても楽しかったです。

クリスティアンさんのレッスンを受けて思ったんですが、これって、どんな踊りにも応用できる身体能力と表現力を養うために超大切なんですよね。舞踊団では定期的にバレエのレッスンもありますが、現代的なダンスの基礎も学べて本当に勉強になりました。


やればやるほど実感しますが、ダンスって「基礎あっての応用」ですからね。ほんとに。

また、舞踊団の全体練習以外にも、キケさんとクラウディアさんのお2人には、私たちが個人的にフェステホマリネラ・リメーニャのプライベートレッスンもお願いし、時間を作っていただきました。特にマリネラ・リメーニャは私達が前から「絶対に習いたい!」と思ってた踊りだったので本当に嬉しかったー!!
あとクリスティアンさんにもコンテンポラリーダンスのプライベートレッスンをお願いしました!


キケさんとクラウディアさんと。
2人とも本当にカッコイイ!!


クリスティアンさん
初めてで慣れないダンスだったけど楽しかったー!


そして迎えたレッスンの最終日。

なんと、クリスティアンさんから奨学金をもらえるメンバーとして、私たち夫婦と、もう一人の計3名のメンバーが選ばれました!!!


名前を呼ばれた瞬間、びっくりしすぎて思わず泣きそうになってしまいました。

他のメンバーと比べてそんなに若くない私たちに投資してあげたいと思ってもらえたことが本当に、嬉しくて、嬉しくて…

頑張ってきてよかった…ほんとに。涙


リマへの弾丸旅行から始まって、毎日の舞踊団の練習や個人レッスンで正直体力的には限界でしたが、この1週間は本当に充実してました!技術的にも精神的にも大きく成長できた気がします。

特に感謝したいのは、国立舞踊団のトップダンサーという超忙しい立場なのに、公演直後の疲れた状態でわざわざトルヒーヨまで来て、私たちにダンスを教えてくれた3人のマエストロたち。彼らのおかげで舞踊団の表現の幅が広がって、作品のクオリティがグンと上がりました!

彼らから学んだのは、ダンスって単なる技術や体力だけじゃなくて、文化的背景や歴史、表現したい感情を大切にする総合芸術なんだということ。この学びを胸に、10月の公演をもっともっと素晴らしいものにするために、これからも練習を重ねていきます!


最後の練習の後で皆でパシャリ。
疲れたけどめっちゃ楽しかったー!!


後日談

ちなみに…私シンジはこの1週間で体を使いすぎちゃって、最終的には両膝に水が溜まって腫れ上がるという悲劇が起きました。笑

もともと高校時代にサッカーで膝を大怪我してから膝には悩まされ続けていたのですが、この5日間「痛いけど、もう少し!」って感じで踊り続けていたら膝が悲鳴を上げてしまいました…。特に最後の数日間は痛みをこらえながら、根性だけで踊り続けてました。

30代に入ると、若い頃みたいに無理がきかなくなったなぁ…と実感することが増えてきました。笑

自分の身体ともうまく付き合いながら、10月の公演に向けてもっと成長していきたいと思います。

この1週間は、ペルーの伝統舞踊の深さと美しさを改めて実感する日々でした。マエストロたちに感謝しながら、これからも踊り続けていきます!

クラウディアさんとキケさんがリマへ帰る日の夜は
彼らを車でバスターミナルまで送りました。
またお会いできる日を楽しみにしています!!

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