2021年ペルー大統領選の決選投票まで、とうとう残り1週間となりました!

これまで様々な調査会社が世論調査を実施していますが、今回は最新の世論調査とこれまでの世論調査の推移、そして世論調査から見えるペルーの分断についてご紹介します。


支持率の推移

ペルー大統領選その6でご紹介したように、4月末までカスティーヨ氏はケイコ氏に対し倍近くリードしていましたが、5月1日のチョタ市での候補者討論会の後、両候補者の差が大きく狭まりました。
ただ、その後はカスティーヨ氏が小幅にリードを伸ばし、両者の差が少し広がっているという状態で、大きな変化はありませんでした。

そして、今週末に各社が最後の世論調査を発表しました。(世論調査を発表できるのは投票日の1週間前まで、と法律で決まっているんです。)

これらは政策技術チームの討論会後の世論調査ですが、その討論会で世論はどのように動いたのか。

各社最新の世論調査までの推移を見てみましょう。


DATUM社



IEP



IPSOS社


模擬投票形式

IPSOS社DATUM社 


各社、投票意向調査の推移はこのようになっています。

両者の差が再び縮まっており、いずれの調査も差が2%以内という結果となっています。
23日に実施された政策技術チームによる討論会が、ケイコ氏にとって有利に働いたということで間違いないでしょう。討論会を見た有権者の一部が、カスティーヨ氏支持からケイコ氏支持、または白票・無効票へと意見を変えたということが分かりますね。

数字上は依然カスティーヨ氏がリードしていますが、2%以内ということで両候補者は統計的に同率であるとも言えるでしょう。


討論会のたびにケイコ氏の支持が伸び、逆にカスティーヨ氏は支持を落としていることから、30日にアレキパ州で開催された候補者討論会の内容次第では、ケイコ氏の土壇場での逆転という可能性も見えてきました。

候補者討論会は、まさに結果を左右する天下分け目の戦いとなるでしょう。


世論調査から見えるペルーの分断

さて、各社世論調査では、地域別社会経済レベル別等の投票意向も発表しています。どういった層が誰を支持しているのか、気になります・・・!

ということで、各社の結果を見てみましょう! まずは地域・地方別投票意向から。

DATUM社

5月25日~27日実施 模擬投票形式


IEP

5月27日~28日実施 電話調査形式


5月27日~28日実施 電話調査形式


IPSOS社

5月28日実施 模擬投票形式

5月28日実施 模擬投票形式


どの調査会社の世論調査でも、軒並みケイコ氏リマでカスティーヨ氏を上回っており、リマ以外の地域ではカスティーヨ氏の支持が上回っているという結果です。


 リマ 対 地方 という構図が顕著に表れていますね。また、特に 農村部や、南部中部ではカスティーヨ氏の支持が圧倒的で、ケイコ氏の支持がかなり少ない…。笑

一言で地方と言っても、特に 南部中部 対 リマ という構図が大きいようですね。(北部・東部は調査会社によって逆転)

南部というと、前回の2016年の大統領選でもケイコ氏が選挙キャンペーン中に生卵投げられたりと反フジモリ派が多い地域なんですよねー。笑(ちなみに今回もケイコ氏は、南部のクスコ州や討論会が行われたアレキパ州で、生卵やら、石やら、ペットボトルやら投げられたりしてました。笑)

ちなみにペルーは首都への一極集中がかなり進んでいる国でして、どれぐらい進んでいるかというと、ペルー人の実に約33%がリマ首都圏在住、つまりペルー人の3人に1人はリマ首都圏在住ということになります。(総人口約3262万人のうち約1080万人がリマ首都圏在住)

なので、ほとんどの地域でカスティーヨ氏が優勢でも、リマで圧倒的なリードを持っているケイコ氏と並んでいるという訳なんですね。

リマは南米でも屈指の大都市で、ペルー国内でもリマとそれ以外の地域とでは全く違う世界が広がっています。そのため、地方(特に農村)からリマへ移住する人の流れは後を絶たず、何もしなければ今後もこの流れは続いていくでしょう。この リマ 対 地方 という構図は今後もペルーが抱えていく問題となります。


では次に社会経済力レベル別ではどうなっているでしょうか。

※ペルーでは世帯の社会経済レベルをAからEの5つに区分しており、Aが最も経済力がある層でEが最も貧しい層です。

DATUM社

5月25~27日実施 戸別訪問面接調査


IEP社

5月27日~28日 電話調査形式

IPSOS社

5月28日実施 戸別訪問面接調査


どの調査でも、経済レベルの高い層ほどケイコ氏を支持しており、経済レベルが低い層ほどカスティーヨ氏を支持しているということがはっきり分かりますね。

ペルーは近年(パンデミック前まで)、豊富な鉱物資源の輸出や内需の拡大によって安定した経済成長を維持しており、それに伴って貧困率も減少していました。
これだけ聞くと、現在の経済モデル自体が悪いという訳ではなさそうです。しかし、貧困率は長期的には確かに下がってはいるものの、リマや他の都市部と比べると農村部の貧困率は依然としてまだまだ高いんですよね…。
こうしたことから、これまでの経済成長の恩恵をあまり感じていない層、特に農村部を中心とした低所得者層の多くが、経済モデルの転換憲法の改正といった大きな変化を主張するカスティーヨ氏に対して希望を見出し、支持しているのではないかと思われます。


ケイコ氏の父であるアルベルト氏によって、90年代に導入した自由主義的マクロ経済路線が、その後彼が大統領の座から退いた後も、その後の政権へと引き継がれていき、近年のペルーの経済成長が実現しているというのは間違いないでしょう。
しかし同時に、ペルーの成長が都市部(主にリマ)に偏在していることで、農村部での貧困の削減やインフラ開発などが進まず、見捨てられていると感じる多くの国民を生み出しているのも残念ながら事実なのでしょう。
また、汚職の多さも不平・不満を感じさせる大きな要因になっていると思います。(アルベルト氏自身も、その後の歴代大統領も軒並み汚職の容疑者となっているんですよね…。)

だからといって、カスティーヨ氏やペルー・リブレ党の政策案で、こうした問題の解決が出来得るのかは大いに疑問です。というか今のままでの政策案では個人的には無理だと思いますね…。


ペルー時間の本日30日は、大統領候補者の討論会が実施されました。(討論会前にこの記事を書くつもりが、討論会後となってしまいました。汗)

この討論会が次のペルーの大統領を決めることになると言っても過言ではないでしょう。



そんな結果を左右するであろう討論会の様子は、後日ご紹介できればと思います!

以上、最新の世論調査&そこから見えるペルーの分断についてご紹介しました!


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2 件のコメント:

  1. 大統領選の支持率に関する世論調査の分析レポート有難うございます。グラフで拝見すると一目瞭然、凄く判りやすいです。ペルー南部、中部、貧困層においてケイコ氏の人気が圧倒的に低いですね。中・南部の都市はほぼ全てアンデス地方にありますので農村部だけでなく都市部でも反フジモリ感情が強いのでしょう。アンデス地方の住民比率を見るとケチュア族やアイマラ族などの先住民の割合が高いと思いますが彼ら中には社会主義を支持する人々が多いのでしょうね。経済成長の恩恵を余り受けられずインフラ、医療、教育の遅れから社会主義の方が自らに有利だと考えるのでしょう。住民の民族構成が似通った隣国ボリビアを思い出します。2006年にモラレス氏が政権を握り今もその後継者であるアルセ大統領が支配する社会主義政権をペルー南部の人々は思い描いているのかもしれません。最終的にどちらの候補が当選するか現時点では全く判りませんがアレキパでの候補者討論会や翌日に行われた「アレキパからの民主主義への誓い」集会の結果がどのような影響を及ぼすのか興味深いですね。

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    返信
    1. rokkoimport様 コメントありがとうございます!
      そうですね。経済成長の恩恵をあまり実感できず、貧困率も高い地域だと現在の経済モデルではなく大きな変化を求める人が多くなるのは仕方ない部分もあるでしょうね。今までの政治の責任は大きいと思います。(地方政府含め)

      討論会もケイコ氏に有利になるものだったかとは思いますが、どこまで世論が動いたかは分かりませんね。「アレキパからの民主主義への誓い」集会も、個人的には正直インパクトに欠けると思いました。
      一方6月1日に各地で実施された「反ケイコ」デモの方が直近では影響を与えているかもしれません。

      このブログでは世論調査を追いかけてきましたが、前回2016年の大統領選では直前まで世論調査でケイコ氏がリードしていたこともあり、本当にどちらが勝つか予想がつかない選挙ですね。笑

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