ペルーって、実はダンス天国だって知ってましたか?

ペルーは、多様性の宝庫。人種、気候、文化、料理、音楽…すべてが地域ごとにまったく違う顔を見せるんです。そして、それらが融合してペルーという国を形作っています。

もちろん、ダンスも例外じゃありません!

ペルーには無数の伝統舞踊があり、それぞれが独自の歴史や意味を持っています。

私たちは2023年からトルヒーヨのペルー民族舞踊団Ritmos y Matices del Perúに所属して、マリネラ以外の様々なダンスも踊っています!

せっかく色んな踊りを学んでいるんだから、ブログでも紹介しないともったいない!!

ということで、今ペルー各地に根付く様々なダンスの魅力をたっぷりお届けしていこうと思うます!


そんなわけで【ペルーのダンス紹介シリーズ】紹介記念すべき第1回は

サマクエカ/Zamacuecaというダンスをご紹介します!

サマクエカとは?

サマクエカは、18世紀頃にリマの下町で庶民の音楽文化の中から生まれた音楽とダンスで、マリネラのルーツとされているダンスです。

男性による女性への愛情を表現したペアダンスで、男女とも両手に布を持って踊ります。

明るく華やかな音楽で、現在の踊り方はペルー黒人文化(アフロペルー)の影響を大きく受けています。

所属する舞踊団のプロモーション用のフォトセッション
ありがたいことに私たちがサマクエカの担当になりました。


サマクエカの歴史

サマクエカの起源は謎が多く

  1. 先住民文化がルーツだとする説:スペイン植民地時代以前から存在していた先住民の音楽や舞踊が基になったとする説。
  2. スペインがもたらした舞踊をルーツだとする説:スペインから伝わった舞踊がペルーで独自に発展したとする説。特にファンダンゴやホタといった舞踊などが影響を与えたとされています。
  3. アフリカ文化をルーツとする説:アフリカ系の人々のリズムや踊りが発展したとする説。


以上の3つの説が主に提唱されています。


サマクエカはあくまで下町の民衆の文化であり、当時リマの上流階層からは下品だとして蔑まれていたようで、残念ながら文書としての記録があまり残っていません。ですが、その音楽と踊りはリマ庶民の間にとどまらず、ペルー各地、果てはアルゼンチンやボリビア、チリまで広まり、各地で大流行しました。


↑当時のサマクエカを踊る男女を描いた絵画


アルゼンチンまで広がったサマクエカは「サンバ」(zamba)として、そしてチリやボリビアにおいては「クエカ(Cueca)」と呼ばれるようになり、今もそれぞれの国で国民舞踊として踊られています。

特にチリ人はこの踊りを気に入ったようで、チリで大流行したようです。そしてチリでは独自のクエカが踊られるようになり、「クエカ・チレーナ」もしくは単に「チレーナ」とも呼ばれるようになりました。
もともとサマクエカはペルー国内で当時サングアラーニャ」「モサ・マラ」、「レスバロサ」、「バイレ・デ・ティエラ」、「サフリアナ」等といった様々な名前で呼ばれていて、いつの間にかペルー国内でもチリを意味する「チレーナ」という名前も使われるようになりました。



しかし、19世紀後半にペルー(ボリビアとの連合)とチリは太平洋沿岸の資源地帯を巡って対立し、戦争が勃発してしまいます。
戦争の結果ペルーはチリに敗戦してしまいます。そして戦後、エル・トゥナンテ(El Tunante)というペンネームで活動していたジャーナリストで作家のアベラルド・ガマラ(Abelardo Gamarra)氏が、「チレーナ」という名前は屈辱的だとして、チリ軍と勇敢に戦った海軍を称えるため、水兵を意味する「マリネラ」と呼ぼうと提案しました。


アベラルド・ガマラ(エル・トゥナンテ)
Abelardo Manuel Gamarra Rondó(El Tunante) 



こうして、「サマクエカ」「マリネラ(現在のマリネラ・リメーニャ)」へと名前が変わることになりました。
そして現在のマリネラ・リメーニャは、6/8拍子の「レズバローサ(Resbalosa)」という別の音楽ジャンルいつのまにか追加された形式で現在も踊られています。(面白いことに、これがいつ、どのように追加されるようになったかは分かっていません。)

レズバローサはマリネラよりも速いテンポで、決まった構造は持たず、歌の後にインストゥルメンタルのパートや短いフーガが続くことが特徴です。

こうしてサマクエカは「マリネラ(リメーニャ)」と名を変え、現在でも踊られているのです…。


※私たちが踊っているマリネラ・ノルテーニャは北部沿岸地域の様々な踊り(主にトンデロ)の影響を受け、リメーニャとは異なったスタイルへと変化したと思われます。



あれ?

じゃあサマクエカという名前のダンスはもうないの?


って思いますよね?

実はマリネラとは違う「サマクエカ」と呼ばれているダンスが今も存在しています。

今回ご紹介するダンスは、ずばりこの

新・サマクエカです!!



現在のサマクエカはどこからきたの?

ややこしいのは、現在踊られている「サマクエカ」というダンスと、「マリネラ」と改称された元々のサマクエカというダンスは別物だということ。


私自身も今現在「サマクエカ」という名前で踊られているダンスがマリネラのルーツなんだと思っていましたが、実は現在「サマクエカ」と呼ばれているダンスは、20世紀半ばに「生み出された」新しいダンスなんです。

この新サマクエカ」の生みの親は、ペルーを代表する劇作家、舞台監督、振付師、音楽作曲家、研究者でもあり、アフリカ系ペルー文化(アフロ・ペルー)の民間伝承の発展に大きく貢献したビクトリア・サンタ・クルス(Victoria Santa Cruz)という方。


ビクトリア・サンタ・クルス
Victoria Eugenia Santa Cruz Gamarra
※このビクトリアさん本当に凄い人で、そのうちブログでも
彼女を詳しく紹介しようと思います!!


彼女の主宰する劇団「Teatro y Danzas Negros del Perú(ペルー黒人舞踊劇団)」が1967年10月3日に初演を迎えた公演で、従来のレスバローサをより緩やかで優雅なスタイルに編曲し、アフロペルー(ペルー黒人文化)風ダンスのコレオグラフィーを作り、それを「サマクエカ」と名付け上演しました。

これは、かつて「マリネラ」と呼ばれる前の、本来の「サマクエカ」への敬意やオマージュとしてそう名付けたものだったようです。

そのため、このビクトリアの生んだスタイル「新・サマクエカ」は、より黒人文化(アフロペルー)の影響を受けた踊りとなっています。


しかしその後、多くの人々がビクトリアが「サマクエカ」と呼んだ新たなスタイルを、昔ながらの舞踊である「サマクエカ」と誤解するようになりました。(…私たちも最近まで誤解してました。笑)

ビクトリアの芸術的な素晴らしさとその影響力によって、それ以降新たなスタイルの曲が次々とサマクエカと名付けられて発表されていき、現在サマクエカと言えばこの「新・サマクエカ」を指すまで発展していきました。


まとめ

つまり、18世紀頃にリマで生まれた本来の「サマクエカ」は、チリとの戦争後に「マリネラ」と改称され、本来のサマクエカのスタイルに最も近いのは今の「マリネラ・リメーニャ」と言えます。

しかし20世紀中頃、アフロペルー文化の研究者であり舞台演出家でもあるビクトリア・サンタ・クルス(Victoria Santa Cruz)が、彼女の主宰する舞台団「Teatro y Danzas Negros del Perú」において、伝統的なリズムや踊りを舞台芸術として再構築することで「新しいサマクエカ」を創り出しました。これは、実際には遅いテンポのレスバローサであり、本来の「サマクエカ」を完全に復元するというよりかは新たな解釈として表現されたものだと言えるでしょう。

というわけで今現在の「サマクエカ」というダンスは、ビクトリアがペルー黒人文化(アフロペルー)の再興と再評価を目指す活動の中で生まれた新たなダンスということになります。ペルーが誇る「サマクエカ」という名前と踊りを、ビクトリアが新たなスタイルとして復活させたと言ってもいいでしょう!

そして「新たなサマクエカ」は、今やアフロペルー文化の象徴の一つとされており、このビクトリアの功績は今もそしてこれからも称賛され続けていくことでしょう。


私たちも今のスタイルのサマクエカの音楽や踊りが昔から大好きで、いつか踊ってみたいと思っていました。なので舞踊団で踊ることになった時は本当に嬉しかったです♪

さて長々と説明しましたが、サマクエカとはどのような踊りなのかを実際にご覧ください!

こちらのビデオは、所属している舞踊団の昨年の公演「RETRATOS」での様子です。

私たちも踊っているので、探してみてくださいね♪




気に入ったらポチっと↓いつも見てくれてありがとう♪

にほんブログ村 海外生活ブログ ペルー情報へ        



Related Posts:

  • 10月7日はマリネラの日!!(Día de la marinera!!)ペルーにはいろんな記念日があるという事で始めた○○の日コーナー今回は、全てのマリネラ愛好家たちにとって大切な記念日10月7日「マリネラの日」(DÍA DE LA MARINERA)です!!マリネラの日は、マリネラの演奏家として活躍した「Augusto Áscuez Villanueva(アウグスト・アスクエス・ビジャヌエバ)」さんに敬意を表し、彼の生誕日をマリネラの日として2012年にペルー共和国議会によって制定されました。Augusto Ásc… Read More
  • ペルー舞踊ダンサーデビュー 初めての舞台マリネラ世界大会も終わり、例年通りだとほっと一息するタイミングですが、実は約2か月後の3月23日に私たちが所属する舞踊団Ritmos y Matices del Perúの単独公演が迫っていました。入団したばかりの私たちとっては初めての舞台です!今回の公演のタイトルはAl Golpe Del Cajón(カホンを叩く音に合わせて)ペルーはその地域的特徴から大きくコスタ、シエラ、セルバの三つの地域に分けられます。コスタとは、ほとんど雨が降らない砂漠… Read More
  • クリオージャ音楽の日「Día de la canción criolla」 ペルーでお祝いされている色々な記念日を紹介するコーナー!今回は10月31日「クリオージャ音楽の日」を紹介します♪スペイン語の「クリオージョ(クリオーリョ)」というのは本来、アメリカ大陸のヨーロッパによる植民地化において「ヨーロッパ系(基本的にはスペイン人)の親を持つアメリカ大陸で生まれた人」を意味する言葉です。そこから「その土地で生まれた」や、「その土地固有の」という意味合いの形容詞としても使われることもあります。しかし、この言葉は本… Read More
  • フォルクローレの日 前回は8月2日のカホンの日を紹介しましたが、今回は第2弾!!8月23日のフォルクローレの日です♪この日は南米各国でお祝いされます。フォルクローレという言葉は、英語のフォークロア(Folklore)のスペイン語読みで、本来の意味は”民俗学”や”民俗的な伝承一般”という意味です。本来の意味を指す場合は、一般的に英語読みのフォークロアが使われ、スペイン語読みのフォルクローレはラテンアメリカ諸国の民俗音楽を指します。ラテンアメリカ諸国の先住民… Read More
  • ペルーのダンス紹介Vol.1【サマクエカ / Zamacueca】 ペルーって、実はダンス天国だって知ってましたか? ペルーは、多様性の宝庫。人種、気候、文化、料理、音楽…すべてが地域ごとにまったく違う顔を見せるんです。そして、それらが融合してペルーという国を形作っています。 もちろん、ダンスも例外じゃありません!ペルーには無数の伝統舞踊があり、それぞれが独自の歴史や意味を持っています。 私たちは2023年からトルヒーヨのペルー民族舞踊団Ritmos y Matices del Perúに所属して、マ… Read More

0 comments:

コメントを投稿

ブログランキング

↓気に入ったらポチっと↓
にほんブログ村 海外生活ブログ ペルー情報へ
にほんブログ村                          
ペルー(海外生活・情報)ランキング

↓ご連絡はこちら↓

名前

メール *

メッセージ *

マリネラ解説YouTube

マリネラ解説YouTube
動画で学ぶマリネラ

人気の記事