4月11日に実施されたペルー大統領&国会議員選挙は2日経った現在も開票作業が進められています。

しかし既に97%の開票は済んでおり、大勢は決しています。1位は急進左派のペドロ・カスティーヨ氏、2位はアルベルト・フジモリ氏の長女、中道右派のケイコ・フジモリ氏に確定のようです。

ペルーの大統領選挙は、過半数の得票を獲得した候補がいなければ、得票数上位2名の決選投票が行われます。

今回の大統領選は事前の予想通り、過半数の得票を得た候補がいなかったため、カスティーヨ氏とフジモリ氏が6月6日に予定されている決選投票に進むことになります。

ペドロ・カスティーヨ候補とケイコ・フジモリ候補(JNE候補者データより)

1位のペドロ・カスティーヨ氏は、小学校の教師で、急進左派。

投票日1週間前の世論調査では上位7位にも入っておらず、泡沫候補扱いだったカスティーヨ氏が出口調査で1位となったことを、各メディアは非常に驚きをもって伝えていました。

世論調査の精度の問題なのか、直前に支持を集めたのか自分としても予想外の展開で非常にびっくりしました。笑

多発する汚職や政治腐敗から、既存の伝統的政党や政治エリートへの不信感を持つ層と、都市部と比べて経済的な恩恵にあずかれていない農村部の不満の受け皿になったのがカスティーヨ氏だったのでしょうか。


しかし、彼は2005年にアプリマック州のアンダワイラスで、警察署を武力で占拠した「アンダワイラソ事件」の首謀者として現在服役中の、元軍人アンタウロ・ウマラ受刑者の恩赦に言及しています。ちなみのこの事件では警察官4名が殉職しています。

※ちなみにこのアンタウロ・ウマラ受刑者は、今回の大統領選にも出馬したペルー民族主義党の党首で元ペルー大統領のオジャンタ・ウマラ氏の弟です。


また、ボリビアの元大統領でこちらも急進左派のエボ・モラレス氏がこの結果を祝福し、「ペルーとエクアドルで『人民』の提案が勝利した場合、ウゴ・チャベス氏の大祖国構想に戻ることができる」と発言したと伝えられています。

「21世紀の社会主義」を標榜し、めちゃくちゃな政策によって経済が破綻状態に陥り、現在「南米の北朝鮮」と化しているベネズエラ。そんな目も当てられない状態の祖国から逃げてきた多くのベネズエラ難民が社会問題化してるペルーにおいて、その状況を作った張本人である元ベネズエラ大統領、故ウゴ・チャベス氏の構想を目指そうというこの発言は、多くのペルー人にとって、とても受け入れられるものではないでしょう。

また、真偽のほどは明らかではありませんが、カスティーヨ氏はセンデロ・ルミノソとの関係が指摘されています。ただ、カスティーヨ氏本人はその疑惑を否定しています。

※センデロ・ルミノソとはその残虐さから南米のクメール・ルージュとも呼ばれ、80年代から90年代初頭にかけてペルーを震撼させた毛沢東派の極左武装テロ組織です。

決選投票ではこれらの点がクローズアップされるでしょう。


一方、2位のケイコ・フジモリ氏は2011年、2016年の大統領選でどちらも決戦投票で敗れており、今回が3度目の決選投票進出となります。

彼女は2度の大統領選の資金調達のため、ブラジルの大手建設会社「オデブレヒト社」から違法な資金を受け取り、資金洗浄した容疑がかけられ現在裁判中です。

また、彼女の父親である元ペルー大統領アルベルト・フジモリ氏はハイパーインフレに陥ったペルーの経済を立て直し、極左武装ゲリラによるテロの混乱を抑え込んだ、という功績から評価する人がいる一方、側近の汚職や、政権末期に議会を解散させ、憲法を停止させた「自主クーデター」を実行するという強権的な政治手法から、独裁者だと批判も多く、その評価は現在でも賛否がはっきり分かれています。

その評価が娘のケイコ氏にもそのまま当てはまり、支持する方は熱狂的に支持しますが、支持しない方は徹底的に嫌っています。

汚職の多さから、政治に対する不信感に溢れているペルー。ケイコ氏は自身のこの疑惑をどのように説明し、有権者の理解を得られるのかが問われるでしょう



さて、この選挙戦をペルーに住む1人の外国人として思ったことは、候補者が多すぎない?ということ。

今回の大統領選は18名の候補者が立候補しましたが、政策的・政治スタンス的によく似た候補者が複数おり、それぞれが票を分け合ってしまっているんですよね…。そもそも多くの政党が大統領候補者の支援グループになってしまっています。

各政党は、全国レベルの政党というよりも特定の地域に強い影響力を持つ、言わば「カウディージョ(地方ボス)的」な政治的有力者の支援政党がほとんどで、それらが全国でしのぎを削っているような状態…。

ペルーのことを考えれば、政策的に似ているそれぞれの政党が一つの大きな政党としてまとまり、党内で徹底的に政策を戦わせて候補者を一本化するべきでしょう。

まぁ、それが難しんでしょうけど…。笑

ただ、いくら決選投票というシステムがあっても、この状態では死票が多くて民意をくみ取れないんじゃないかと思うんですよね…。


あと200万票以上という白票の多さもびっくりでした。投票総数の約12.5%が白票です…。

白票だけで2位のケイコ氏の得票数を上回り、白票と無効票を合わせると、1位のカスティーヨ氏の得票数を上回る数となります。「投票は義務だけど、誰に入れていいか分からない」という人が多いのでしょうかねー…。


とはいえ、6月の決選投票にはこの2人のどちらかを、この国のリーダーとすべきか決断せねばなりません。

もう仕方ないっ!笑

急進左派」か「フジモリ」か、というのはこの2人に投票しなかった70%近くの国民にとって、非常に難しい判断となるでしょう。


ペルー独立200周年の節目に、大統領の座を与えられるのは誰なのか…。

ペルーに住む、ペルーを愛する1人の外国人としては、ただ見守ることしかできませんが、混乱なく、無事に新政権へ権力が移譲されることと、新しい政権にはパンデミックで疲弊したペルーを立て直してほしい。

ただそれだけを願っています。


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